メルクリン破綻

昨日は朝からメルクリン破綻の報に接し、落ち着かない一日であった。
しかし、ドイツでいう破産手続きというのは、日本でいう会社更生法あるいは民事再生法の申請という再建型会社整理ということらしいというのが判り、ちょっと落ち着いてきた。
実際、NIKKEI.NETの記事にも「当面、事業を継続し管財人の下で生き残り策を探る」とあるし、折りしも、ニュルンベルグで開催されているトイ・メッセにも出展しているという報にも接し、うなづくところでもある。
つまるところ、銀行が1月末期限の債務の借り換えを認めなかったこと。スポンサーである、英国の投資会社がこれ以上の追加出資を認めなかったため、キャッシュプローがショートしたということであろう。
「少子化やゲーム機器の拡大などのあおり」という記事にもあるが、これは日本でも同様のことでもあり、またメルクリンが放漫経営であったことも耳にしない。
いわゆる、サブ・プライム問題に始まる金融危機による欧州金融界の引き締めの犠牲となったのではないかと、模型・玩具業界の情勢には詳しくは無いが、憚りながら会計人の一人としてはそう考える。
メルクリンは、機関車トーマスやサーカス列車を組み合わせた入門セットをここ数年リリースしてきており、また、鉄道模型に対する一般の認識も日本に比べてはるかに理解がある環境にあったはずれある。
また、主力であるHOゲージに関してはTEEの50周年やメルクリン創業150年にあわせた新製品も発表され、デジタルコントロールに関しても新製品を投入してきており、新しい投資会社により積極的に展開を図ろうとしていた中に世界同時不況の犠牲となったのではないであろうか。
しかしながら、私の楽しんでいるZゲージに関しては、新金型での意欲的な新製品はあまりみられず、従来の製品の塗装替でお茶を濁しているのではないかと思える節もあり、現在ドイツで走行している車両についてはほんの一部しか楽しめない状況に追い込まれている現状で、カタログ落ちする定番の製品が続出する中、限定品で、オリエント急行の塗り替え版や戦後まもなくの新型急行列車を新金型で発表するという、日本のNゲージと似たような方向を探りながら、やはり市場規模の小さなZゲージは今回の破綻により切り捨てられるか、身売りもありえるのではないかとも思われる。
昨年、ある玩具問屋の破産後の処理の業務をお手伝いをさせていただいたが、売上は減少方向にありながら、単年度でみればそれほどひどいとは思われない状況にありながら倒産に追い込まれていた。
また、日本ではここ数年玩具問屋の破産が相次いでいる。
私見ながら、在庫の負担とこれを含む借入金の負担が大きな要素ではないであろうか。
どの商売でもそうであるが、会計上在庫は資産として計上されるため原価からは控除されているため、在庫を抱えている部分はいわゆる利益であり、借入金の返済もこの利益の中から行えなければキャッシュフローはショートする。
であれば、金型や開発費の償却の済んだいわゆる定番の製品は医薬品のジェネリックとは意味合いは少々異なるが、低価格で販売して裾野を拡げる役割を荷い、現行の華やかな列車やノスタルジー溢れる列車について購買者の意欲を殺がない程度に発売すれば...
とも考えるが、
日本においては、その魅力的な列車達は新発売時に購入しなければ、当分入手不可能か、オークションの転売族から高額で購入しなければならないという現状を考えれば、メルクリンはまだ良心的であり、他の欧州メーカーでは新発売時に購入できなければ当分入手不可能という日本と同様な状況、そして、それでも欧州鉄道模型メーカー業界の再編は例年のごとく次々とが合従連衡していることを思えば、抜本的な解決策などないのかもしれない。
一ユーザーの立場から言えば、カタログに掲載されている製品はいつでも購入でき、定番品は安価に入手可能というのが理想かもしれないが、それでは模型業界の存続など全く危ういのかもしれない。
どういう形になるかはわからないがメルクリンというブランドは残るであろう。
その中で、あるいは別ブランド名でも構わないがZゲージ自体が存続してくれれば、
魅力ある新製品がしばらくリリースされなくても、
不況で我が懐が寂しくなっているだけに、余計な出費も抑えられると思いつつ
メルクリン社の再建とZゲージの存続を願うしかないのかもしれない。

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